Live Reviews

Published on October 14th, 2016 | by Yoshi

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downy live at 梅田 Shangri-la 2016.10.13

ー 静寂に谺する氷点下の炎 ー

2年前の大阪公演を見逃したことで結果的に14年ぶり(!)に見ることになったdowny。

前回は十三ファンダンゴでのワンマン、さらにその前は梅田のClub DAWN(現在のNOON)でのTHA BLUE HERBとこだま和文との共演(これも今考えると凄い)だったので、本当に久しぶり過ぎて時間の感覚が分からなくなるくらいだった。

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大入り満員の梅田Shangri-la。

固唾を飲んで静まり返る観衆に、太いシンセ音が斬り込む。
9月にリリースされたばかりの新譜から、「凍る花」だ。
人力エレクトロハードコアとも言えるチューンは、ライブのオープニングに相応しい力強いビートで一気にdownyの世界に観る者を惹き込んでいく。

しかしオールドファンには嬉しいことに、次に演奏されたのはセカンドアルバムから「葵」、続けて「象牙の塔」だった。

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削ぎ落としきった絶対零度のアンサンブル。
強固なリズムセクション。
針の山のような冷たい轟音。
凍える空気。
胃が痛くなるような緊張感。
反比例して噴出するアドレナリン。

これこそdownyだ!という演奏により一気にフラッシュバックする記憶。

そこを「檸檬」のトリッキーなドラムがぶち破る。
新作の中で最もライブで聴いてみたい曲の1つだった。
ノリが掴めないのに何故か体は動いてしまうこの不思議なビートは、ライブでも微塵もブレない。
改めてdownyの演奏面のレベルの高さを思い知らされる。

そこから「時雨前」「春と修羅」「色彩は夜に降る」とアップビートな曲が続く。
比較的にビートが分かりやすいこともあり、否応なく蠢き出すオーディエンス。

続く「アナーキーダンス」で待ってましたとばかりの静かなどよめきが起こり、「形而上学」でコアなファンが歓喜する。
ただ、あくまでさんざめくことがないのが彼らのライブらしい。

しかし今回のライブ全体を通し、過去から明確に変化したことがある。

それは青木ロビンの歌の在り方だ。

「漂う冷たい轟音の壁の中で吐き捨てるように叫ぶ呟き」

これがライブにおけるロビンの歌の印象だったのだが、今回それぞれの楽器の輪郭がはっきりとし、1つ1つの音像が立つようなミキシングバランスにされたことで、「楽器の1つ」であるボーカルが相対的に際立っている。
ボリューム自体も大きいのではないだろうか。

そこで見えてきたのは今まで轟音に隠れていた歌の表現の部分だった。
無機質に思えていた彼の歌に込められていた熱量、力強さ、繊細さ、そして、ある種のブルース。

その観点で今回のハイライトだったのは10曲目に演奏された「海の静寂」だった。

メンバー同士が離れて暮らし、それぞれがいくつものプロジェクトをこなしながら、かつ難易度がさらに上がった新作のツアー初日ということもあり、まだ多少の粗さを残し人間味のようなもの(それもdownyから初めて感じた感覚だったのだが)も見えるアンサンブルだったのは否めない。
だが、それを一気に覆したのは青木ロビンの歌だった。

新作の3番目に収録されたこの曲は、Taigen Kawabeとの対談でも触れられたようにボーカル1発録りだったそうだが、それもうなづけるどころか、予想を遥かに上回る程、ライブでは「歌の力」が演奏全てを引っ張っていた。

downyであることの矜持。

それが棘を内包した熱に変換されて高らかに歌い上げられる。

琴線という心の臓器、しかも誰にも触れられたことのない部分を素手で鷲掴みしにくるエモーション。

9年間音楽という意味では凍結状態だった期間を経て完全に醸成されてしまった、真の歌い手が持つ本能を揺さぶる声の力。

ただ「上手くなりましたね」なんて生っちょろいものではない。

ひょっとしたら前からこれ程だったのに聴こえなかった(聴かせなかった)だけなのかも知れない(だとしたら、前から聴かせて欲しかった)が、活動休止期間はここに繋がるために必要だったのではとすら思える程の、バンドとしての進化だった。

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それに鼓舞されたかのように「左の種」、「⊿(デルタ)」、「或る夜」と続く演奏は完全に化け物だった。

ここで予想外の事件が起こる。

「あれ、ボーカルの人がMCをしてる、、、?」

過去のライブでは誰も1度もMCを聞いたことがない。downyとはそういうバンドだったのだ。

思わぬバンドからの歩み寄りに、多少の戸惑いを感じながらも徐々に氷解する観客の心。

「もし僕らの音に優しさを感じるのであれば、僕たちは兎に角音楽を愛していましたし。」

以前のインタビューでそう答えてくれた青木ロビン。
今回はそれが、言葉数少なめなMCという形を通して提示されたかのようだった。

続く「曦ヲ見ヨ!」そして「弌」という、downyの中で最もエネルギーに充ち、物理的に拍を取ることすら困難な曲でも、客側は昔のように突き放されずに各々の方法でうねりを楽しんでいたように思えたのは、きっとそこにいる全員が「音楽愛」というキーワードで繋がっていたからに違いない。

“他にない最高の音楽を用意したんだ。みんな好きに楽しんでくれ!”

勿論そんなことをMCで言ったわけではないが、完璧を求める彼らが表現したいのは、そういうことなんじゃないかとふと感じた。

最後、「また来ます。」の極めて短いながらも決意に満ちたMCから、downyで最もドラマチックなナンバーである「猿の手柄」が演奏される。

しかしそこで大団円にしないのがdowny流。
「安心」という圧倒的なハードコアチューンを突き放すようにお見舞いして舞台を去りアンコールは一切なし。

それでも、ホールが明るくなってもまだ鳴り止まない拍手の渦が、「現・downyのライブ」という稀有な体験の質を物語っている。

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2016.10.13 セットリスト

凍る花

象牙の塔
檸檬
時雨前
春と修羅
色彩は夜に降る
アナーキーダンス
形而上学
海の静寂
左の種
Δ
或る夜

MC

曦ヲ見ヨ!

MC

猿の手柄
安心


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