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Published on April 15th, 2015 | by Yoshi

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Interview: Itaru from COHOL (Japanese Version)

— By Yoshi and Beige Baron

全部ここに照準を合わせてチューニングしてきた人生、ここで爆発させなきゃ罪ですよ。 – Itaru

11130092_805123729573966_5895673983015033695_n蒼白い炎のような照明が炸裂する中、表情が全く判別出来ないほど長髪の男と、頭の天辺から爪先まで腐蝕した包帯のような布に覆われたもう1人の男。
蠢く聴衆を引き裂くように再生される機械音のノイズと、耳鳴りのようなハイハット。

その渦の中に恍惚と消えて行く全ての日常ー。

場所は大阪の郊外。

そこで今夜起こった事が全く信じられなくて、COHOLがついさっきやってのけた事について他の仲間達と半ば興奮状態の中で喋っていた。

一体何がどうなって、こんな激烈なデプレッシブブラックメタル / ハードコアな音楽から希望やポジティブな恍惚を感じるのだろうか?

先人と同様に、自分のリアルなセンスで生み出したオリジナルの表現を持たなければ強い表現者にはなれないですからね。

2人のボーカリスト ー 包帯づくめのベーシスト・Hiromasaともう一方のギタリスト・Itaru ー の怒りと絶望の咆哮が絡まり合う。

しかし、その音楽の核となる部分であって、絶叫や嵐のようなリフや顔面が崩壊しそうなブラストビートの内側にあるもの、それはとても繊細で、かつ微かな希望を内包した「何か」なのである。

それは光と影の交錯であり、またそれは強烈に観る者を惹きつける。

それは音楽の内側にあってシニシズム(諦めにも似た皮肉)に抗い続けるイノセンス(純粋さ)であり、それによって彼等の音楽は圧倒的な、聴くものの心を捉えて離さない力を持ち得ている。

ファーストアルバムのあと ー 1枚のスプリットを挟みはしたけれども ー およそ5年もの間、彼等のファンは新作をどれほど待ち詫びていたのか計り知れない。

しかし、遂にその長きに亘る沈黙を破り、「裏現」と名付けられた二枚目のアルバムがこの春5/29にリリースされることとなった。

その経緯について、ギタリストのItaruがBrownnoiseunit (以下BNU) メンバーに語ってくれた。

1Itaru ー 1st album「空洞」をリリースするまでにこのバンドを始めてから8年程の時間があったんですよ。

初のアルバムなんで、空洞では単純に自分達の好きな様に描いてきた楽曲が詰め込まれてますが、これから発表する2nd. albumはHiromasa (Vo/Ba) の歌詞の描写に楽曲も寄り添ったアルバムになっています。

日本に育ち、生きるということはいつも簡単だと言うことは出来ない。この国ではどこでもかしこでも遍く同調圧力が働いており、それが全てに浸透している。
いわゆる「普通」の範疇を超えた音楽やサブカルチャーの趣味を持つ多くの少年少女、またはそこに「普通」って何なの?と疑問を持つような青少年達は、いつも学校や職場で孤立の危機に立たされる。それは、密接に結びついてこの国の全てを覆っている社会構造から、蚊帳の外に追いやられることを意味する。

同様に葛藤しながら生きている自分達を取り巻く世代の人間の世界を、リアルな感覚で描いた歌です。

「出る杭は打たれる。」

社会からの孤立は、罪悪感や自責の念を喚び起こす。

「何故僕はみんなに馴染めないのだろう?」

「何で僕はみんなをがっかりさせるんだろう?」

「何もかもがどうでもよくなってしまうんだ。」

2近年この国における青少年の死因で最も高いものは「自殺」である、と統計は悲劇的な事実を告げる。

Itaru ー 1st. albumのHiromasaの歌詞は人間の内面の葛藤を歌ったもの。2nd. albumではその内面で苦悩していた人間が決意と共に外の世界にフォーカスして生き始める描写です。Hiromasa自身や、周囲で同様に葛藤しながら生きている現代の自分達を取り巻く世代の人間の世界。

要は自分達がここ日本で今、生活を送っているリアルな感覚で描いた歌です。

それは、まるで上っ面は進歩的で調和しているように見える社会の中で、重圧によって潰れて行くノルウェーやスウェーデンの子供達のように、また、それを吐き出すために彼等がただ新しい芸術の一つとしてだけでなく、サブカルチャー自体を創り上げたように、COHOLもまたそのフラストレーションのはけ口をブラックメタルのカタルシスやハードコアの強烈な拒絶の中に見出した。

今自分達が生きる上で直に感じる想いが一番の自分達のオリジナリティーだと思っています。

Itaru ー ブラックメタルのサウンドや彼等の世界観は俺達の心を鷲掴みにし続けてます。

しかし全く同じ表現が自分達にそのままフィットするはずはないんですよね。生活環境や歴史、風土、身体の特徴、言語、いろいろ違う訳ですから。メタルの文化への敬意がある俺達が、その大好きな先人のバンドの真似をしたところでリアルではないんです。先人と同様に、自分のリアルなセンスで生み出したオリジナルの表現を持たなければ強い表現者にはなれないですからね。悪魔や魔法、地獄の世界は俺達にはリアルでないんですよ。

3西洋文化の中でなく日本で生まれて生きてきた俺達、過去の歴史上ではなく現代に生きてきた俺達、今自分達が生きる上で直に感じる想いが一番の自分達のオリジナリティーだと思っています。

「クソみたいな葛藤の生活の中で喜び見出せるこの人生はたぶん最高」ってことを体現してるのかもしれません。

BNU  ー それが日本語にこだわって歌詞を書く理由なんですね。英語で書くバンドって多いじゃないですか。みんな欧米人のように髪を染めて洋物ブランドの服を着て、アメリカやヨーロッパのセレブに憧れて。

Itaru ー Hiromasaの歌詞世界の描写を崩さず純度の高いレベルで表現したいが故です。

日本で育った俺達がこの風土で培った表現力と指向性を、まずは同じ日本人に強くブッ刺したい。そこにもし揺るがない強さがあれば、国境も超えられるかもな、って。自分達への挑戦ですね。

BNU ー 最初に演奏を始めたのはいつ頃ですか?また、曲作りのプロセスも伺いたいです。それぞれのパートごとに聴いてみると、およそ理解出来ない程複雑な演奏をされてますが、それらが混ざり合った時にはまるでパズルのピースのように継ぎ目なく繋がってますね。

Itaru – ギターを始めたのは12歳、中学校に入った時です。小学校から上がったばかりの俺達に学校の先輩が新入生歓迎会っていうイベントでバンド演奏披露してくれて、もうそこからどっぷり音楽の人生ですね。 影響を与えたアーティスト。。。なんだろう、小田和正、久保田利伸ですかね。母親が家事しながらカセットテープで毎日流してた(笑)。幼少の頃の音楽への入り口です。
曲作りに関しては、原型は個人で固めて、メンバーに伝わるレベルまで練ったらスタジオで具現化。この繰り返しです。

BNU ー ほとんどのバンドにとって、自分たちのホーム以外のグランドでより多くのリスナーを獲得することは大きな挑戦だと思います。特に英語をネイティブランゲージとしていない国のアーティストではその挑戦はよりハードルの高いものとなりますよね。

情報が過多になっている環境では人は感覚を麻痺させますよね。当たり前だと思う。

アメリカやヨーロッパのバンドは自分たちの曲をBandcampで紹介したり、Youtubeにアップしたり、SNSで働きかけたりしますが、日本のインディシーンでは、ちょっと違います。デジタルでの配信はそんなに普及していない印象ですし、Spotify (ヨーロッパの定額制音楽ストリーミングサービス) もない。現在でもCDが主流である稀有な文化だと思いますし、それが時に海外のリスナーにとって、ローカルの素晴らしい音楽に触れるチャンスを妨げているようにも感じます。この違いはどこから生まれていると思いますか?

B2pCOa8CMAA-dpyItaru ー これすごい深い質問ですね。最終的な俺の考えとしては、人それぞれでいいと思うって事。ただ表現者側の立場からすれば、リスナーに音楽の聴き方やディグり方などを強制するのはナンセンスだとは思ってます。

だからダウンロードの文化や、ストリーミングの文化が出来た事は選択肢が増えてポジティブだと思ってます。それをビジネスとして整えてアウトプットする際に初めて問題が出てくるんじゃないかな。俺個人としてはCDやカセットが好きだけど、やっぱりダウンロードも便利でいいですね。ジョギングする前にダウンロードで好きなアーティストのアルバム買って走りながら新しい音源聴くの大好きだし。

BNU ー あなた方は沖縄や、海外でのライブも精力的にされていますね。オーディエンスからの反応の違いなどを感じられることがありますか?

Itaru ー 情報過密都市から離れれば離れる程、オーディエンスの感情はよりピュアでファーストインプレッションで大きく感動してくれる場合が多いと思います。でもそれは本当に入り口の話し。

unnamed-1俺の生活する東京で周囲にいる仲間やファンだって、入り口さえ完成すれば、最高の友達になれる。でもやっぱり自分含め、情報が過多になっている環境では人は感覚を麻痺させますよね。当たり前だと思う。

渋谷や新宿、外歩いてるだけで半暴力的にヒットチャートの産業音楽やレストランの宣伝、宗教布教や右翼、大型ファッション企業の宣伝、セックスプレイスの看板、自分に必要ないと思う情報が目から耳から皮膚から、どんどん入ってくる。こんな環境にずっといたら情報なんて欲しくなくなりますよね。

今の自分達の力をまず100%露呈して心身ボロボロになって笑顔で故郷に戻ってきたいです。

ティッシュ配りとかさ、原理を考えると恐ろしくなりますよ。ワイロみたいなものでしょ、あれ。ご褒美ぶら下げて他人の懐に飛び込み、自分のセールスアピールを無意識に刷り込む。超怖いですよ。

BNU ー 社会が汚染されているような感じ?

Itaru – そんな感じです。そんな人間界の生活や、不感症な人間になるのが嫌で今でも音楽が俺をあるべき場所につなぎ止めていてくれてますけどね。

BNU ー COHOLの現時点での最新作はDaymareからリリースされたHeaven In Her Armsとのスプリットでしたね。今回の新作はフランスのOsmoseからのリリースとなってます。

Itaru ー 本当に光栄です。俺が中学校に入学して音楽をやり始めて、高校でHiromasaに出会ってバンド初めた時からずっと変わらない夢がヨーロッパでのリリースとツアーでした。Kyosukeと出会って今のCOHOLが出来上がってそれが具体的に狙える射程圏内に入ってきました。

10494524_665937123492628_1636712320074820598_n全部ここに照準を併せてチューニングしてきた人生、ここで爆発させなきゃ罪ですよ。今までの人生で一番の握力で握った拳振り上げて自分達なりの発明を、ヨーロッパで試してみたい。結果どんな反応でも構わないから今の自分達の力をまず100%露呈して心身ボロボロになって笑顔で故郷に戻ってきたいです。

彼等にとって、音楽は現実と立ち向かうための手段であり、魂の救済であると共に、日本人として感じる日常をありのままに表現する手段なのだろう。

インタビューの後、幸運にも新作のデモ音源を耳にすることが出来た。

ここには、絶望の深淵を覗き込んだことのある者にしか吐き出すことの出来ない激流のような咆哮と、しかし10年もの月日をかけてその底から這い上がり、何か大きなシステムの一部として組み込まれている人の流れを逆流し、満身創痍のまま自分の地平を踏みしめる者の力強さが同居していた。

間違いなく、現在の日本人が日本人のままで辿り着ける最果ての地に彼等は今立っており、そこから世界に向けてその存在を声高に叫ぼうとしている。

5/29のリリースを、あと少しだけ心待ちにしていて欲しい。

COHOL Official Website
COHOL Twitter

This article available in English here.


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