CD Reviews

Published on August 8th, 2016 | by Luke Frizon

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Review: Wombscape | “新世界標本”

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Photo: Kenta Izumiya

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“始まりは 終わりだった”

Tr1.『跋文』では、黒澤清の初期ホラー映画の幽霊を彷彿とさせる、ボーカリストRyoの虚無的な語りが、悲壮感と共に大きくうねり出す歪の中へ、リスナーを引きずり込んでいく。

Tr2.『捩れた「解放」が嘲笑う』では、重なり合う声と哀愁的なギターワークが、曲の荒涼感をより強烈なものにする。

「新世界標本」というアルバムの冒頭に配置されたこういったいくつかの要素が、本作品が只のアルバムではなく、冒険心に満ちたそれ以上の何かへと押し上げる。

突き刺す不協音の暴力性はリスナーを衝撃とエモーショナルの渦へと放り投げ、それは「アルバム」という概念を破壊する瞬間でもあるのだ。

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この時点で、既にリスナーはただうろたえるばかりの存在でしかない。

どこにも逃げ場所などはなく、何の知識や警告も提示されることのないまま、ただ手の引かれるままに暗黒の洞窟の中へズルズルと引き込まれていくのだ。

Tr3.『真白な狂気』にて不浄なる感情が吐き出されても、なお奇怪なキラーリフ、ダイナミックな展開は止むことはない。

彷彿とさせるのは2000年代初期のCurl Up And DieやBotchだ。

冷酷なギターのメロディーにボーカルは後方へと退き、爆発するのはカオティックな動パートのみ。

この段階ではまだ全体的な雰囲気や方向性は定まっておらず、アルバム「新世界標本」から発せられる負のバイブスを増幅していると言える。

アルバムタイトルであるTr.4『新世界標本』は更に際立つものになっており、楽曲の幕開けを乾いたリズムがフィードバックと共にゆっくりと演奏したかと思うと、突然爆発する。

不協和音で構成される暴力的な音階が突き刺さる、アルバム全体で最も衝撃的でエモーショナルな瞬間だ。

恐怖さえ感じるRyoの叫び声と、敵意剥き出しのギターストロークがえぐり出す。

それは物悲しく、そしてヘヴィ。

この流れはWarningやMy Dying Brideにも通じるドゥーミーなヘヴィサウンドとも言うことができるだろう。

と同時にアルバムが予測不能な展開から、静かな次への導入部分へとシフトする瞬間でもある。

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Photo: Katsuki Mitsuhashi

Tr.5『夢に夢見た日々の記憶』は、多くの悲しみと共に、曲は煮え切らないような、散漫とした音色で終わりへ向かう。

ノスタルジックな調べをバックに不気味な声で彩るRyoのナレーション、そ

れは心に暖かく、そして何よりも冷たく響いている。

アルバムでもハイライトを飾る素晴らしい瞬間だ。

華麗で、純粋、Justin BroadrickのJESUを思わせる。

言葉自体には希望がないが、声色には優しさがあり、バンドの作品の中でも新たなアプローチを感じさせ、重要な要素になっている。

 

そしてプログレッシブな展開も、ゆったりとした曲も、悲愴的な曲も・・・。

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Photo: Ellie Photography

Tr.6『正しい愛が正しい絶望に変わるまで』では、wombscapeの本当の強さ・美しさを表現している。

この膨大なエンディングは耳障りな展開も含む、彼らのトレードマークとも言える要素であり、うっすらと聞こえるノイズと叙情的な雰囲気は、Sleepytime Gorilla Museumのようでもある。

トワイライトゾーンの映画のように、リスナーを暗闇の隅に取り残したままフェードアウトしていく。

最後の曲となるTr.7『叙文』には希望を感じさせるメロディが散りばめられている。

まるでバンドがハッピーエンドへ向かって、どうにかして辿り着こうとしているかのように。

その想いはナレーターの囁きと共に姿を現していく。

“嵐が来る”…全く曖昧で危険なこの警告が私の脊椎に伝わった。

不安と静寂が暗い部屋に残され、私はすぐにもう一度再生ボタンに指をかける。

 

「新世界標本」は24分の、精神的な極限、もっとも暗い深みへの旅だ。

最もヘヴィな瞬間には、まるで猛吹雪の中で身体中を雹で打たれるような、また最も優しい瞬間には、存在を赦されているような、そんな感覚を覚える。

持ち上げすぎか?

しかし、この薄いベールは、wombscapeの本当の意図をむしろ簡単に見え隠れさせている。

 

このアルバムの肝は、君が体験したこともないであろう暗黒である。

超絶にオススメする。

FFO: Spitfire, Curl Up And Die, Crippled Black Phoenix, “You Fail Me”-era Converge.

“新世界標本” [New World Specimen] CD/Download via bandcamp. Follow: Facebook and Twitter.

Review by Luke Frizon, vocalist of Jack the Stripper. Translation by Mizutani @ 3LA Records.


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